日本三不動の一 ロゴ 瀧谷不動尊

12月末 新年を迎える

12月末 新年を迎える

 年末の慌ただしさが過ぎると、新年を迎えます。新年は初春ともいい、実際の春の感覚とは多少ずれ、旧暦での正月の頃を指す言葉といわれます。一方、古くより「一年の計は元旦にあり」「一年の計は春にあり」といわれるように、ただ漠然と一年をスタートするのではなく、年(春)の初めに一度昨年の出来事を振り返り新しい目標や計画を立て、頭の中を整理し一歩を踏み出したいものです。

 弘法大師は、『秘蔵宝錀』という書物の中で「春の種を下さずんば 秋の実いかんが獲ん」と記しています。すなわち、「春に種を植えなければ、どうして秋に実を獲ることができるのだろうか」という意味です。しかし、この言葉は農作物のことを例え話として用いているだけではなく、仏さまの教えにいかに向き合うかについても述べられているのです。誰もが仏さまと同じ心を開花することができるけれども、それにはまず「悪いことをなさずに善いことをする」という生活習慣を保つことが大切なのだと。そのような生活を始めなければ、どうして仏さまの教えを理解して開花することができるのかと。

 「悪いことをなさず善いことをする」非常に簡単な言葉ですが、実行するのはなかなか難しいものです。どうしても自分の煩悩を抑えきれずあれもこれも手に入れたい、ちょっとした嘘をつく、他人に怒りの矛先を向けてしまうなどの身勝手な振る舞いをとりがちです。

 そうした私たちの心や行動を瀧谷のお不動さまは、忿怒の形相で右手に持つ利剣や火焔をもって取り除き正しき道へと導いてくれます。年の初め、瀧谷のお不動さまにお参りして前年の垢をすべて振るい落とし、新たな年の目標や計画を立てそれをお不動さまにお伝えし、気持ち新たにスタートしていただきたいと思います。

執筆者 真言宗智山派 東京都 圓應寺 住職
智山教化センター長 山川弘巳 師

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