今年もまた、蓮の花が咲く時期になりましたね。
夏の暑さの中、緑一面の田んぼや蓮池の上を吹いてくる風は、なんとも清々しい涼しさを私たちに届けてくれます。
青空の下、満開の蓮の花を見ると癒されますし、一つ一つの花の上に仏さまや菩薩さまが座っておられるのではないかと想像すると、目の前に曼荼羅の世界が広がっているようにも思えてくるでしょう。
昨年の7月に蓮の花のお話を書きました。みなさまの心の中にも菩提の種(仏性)を見出すことができたでしょうか?
蓮は泥の中にありながら、泥に染まらず美しい花を咲かせます。私たちの心の中にも、煩悩や苦悩の泥に染まらない清らかな花の種がきっとあるはずです。
素直な心で仏さまに手を合わせ、私たちが本来持っている心の清らかな本性をよくよく観察してみましょう。また、仏さまとの心の一体感を体験するため、阿字観などの瞑想をしてみるのも良いかもしれません。
私も「小僧」の時代から30年以上、お護摩祈祷や仏さまに手を合わせる日々を過ごしてまいりましたが、心の蓮の花に喩えるならば、まだまだ小さな仏性の苗を育てている最中で、ようやく緑色の葉っぱが伸びてきたばかり、といった感じでしょうか。やはり「修行に近道はない」と思い知らされます。煩悩の泥の中にあっても、慈しみの心をもってしっかりとその苗を育てていけるよう、地道に修行を積み重ねてゆきたいと思います。
「人生は心の修行の道」ともいわれます。こちらも近道はありませんね。仏さまから分け与えられた命を正しく精一杯に生きて、そうした日々を積み重ねることにより心の蓮の花を少しずつ育てていきましょう。
執筆者 千葉県南房総市
真言宗智山派 勝蔵寺住職 田口秀明