日本三不動の一 ロゴ 瀧谷不動尊

1月 冥土めいどの旅の一里塚

1月 冥土の旅の一里塚

明けましておめでとうございます。

令和五〔(みずのと)()〕年、新しい年の始まりです。

お正月には多くの方が、神社やお寺へ初詣に出かけられることと思います。

無事に新年を迎えられたことへの感謝、今年一年の健康や家内安全、合格祈願など、願い事も様々でしょう。

年の初めに参拝をして、境内に掲示されている「年齢早見表」を見ると、実際の年齢より2歳も年をとったように書かれています。厄年などにあたる年齢は、古くから数え年が基本となりますから、ほとんどの寺社で数え年の年齢表が掲示されています。生まれた年を1歳として、誕生日にかかわらず元日に1つ年をとることになるので、誕生日を迎えるまでは実際の年齢よりも2歳多くなってしまいます。

私も普段はあまり数え年を意識せずに生活しているので、「今年、もうそんな年齢になるの?」と毎年思ってしまいます。特に12月生まれの人にはそのように感じられる方が多いのではないでしょうか?

(※ 数え年は古くから使われていた年齢表現なので、立春の日から節分までを1年の区切りとする考え方もあります。)

お正月になると思い出される歌があります。

  門松は 冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし

とんち話で有名な一休さんが詠んだと伝えられる歌です。

ある年のお正月、一休さんが竹の先に髑髏(しゃれこうべ)を突きさして、洛中(京都の町)の家々の門口(かどぐち)(玄関先)を「ご用心、ご用心」と叫びながら歩き回り、「めでたい」というのはこの髑髏のように目が出て(骨だけになって)しまったことを「目出た(い)」というのだ、と言った逸話とともに語られることが多いようです。

お正月にはみなさん「明けましておめでとうございます」「新年おめでとうございます」と挨拶をしますが、数え年では正月を迎えると1歳年をとりますから、残りの人生が1年短くなったことになります。

「めでたい、めでたい」というばかりではなく、「いま命あることに感謝する心を忘れるでないぞ」と、一休さんは(さと)されたのではないでしょうか。

「死を思う」ことは「いかに生きるか」を考えることにつながります。 「めでたくもあり めでたくもなし」よりも「めでたくもあり ありがたくもあり」と感謝しながら、人生を全うしたいものですね。

合掌

執筆者 千葉県南房総市
真言宗智山派 勝蔵寺住職 田口秀明

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