日本三不動の一 ロゴ 瀧谷不動尊

6月 善く楽しく生きる

6月 善く楽しく生きる

「人生100年」といわれる時代になりました。

墓石に刻まれている文字や過去帳などの書類、お寺の古い記録類を調べてみると、昭和初期頃までは、亡くなった方のうち約3分の1を占めているのが10歳未満の子供だったようです。医療の進歩によって新生児や乳幼児の命が救われるようになったことは、戦後の日本において平均寿命が大きく延びた要因の一つだとされています。また近年では、100歳以上の高齢者が8万人を超え、日本はまさに長寿大国となっています。

現在、日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳(2020年)となりました。海外の研究によれば「日本では、2007年に生まれた子どもの半数が107歳より長く生きると予想される(『LIFE(ライフ) SHIFT(シフト)‐100年時代の人生戦略』2016年)」ということから、現役世代の多くの方や、若者世代のほとんどの方は「人生100年時代」を生きていくことになるのでしょう。私のお寺の近くにも、今年103歳になる方でとてもお元気に過ごされている方がいらっしゃいますし、今後は「健康寿命」がさらに延びていくと良いですね。

このように、私たちは100年の人生を生きていくわけですが、私たちの命はしばしば「水の一滴」に喩えられます。海から上がった水蒸気が雲になり、雨粒となって大地に降りそそぎ、川や地下を流れてまた海へと還って行く。私たちの命も同じように、大きな命の源である仏さまの世界からこの世に生まれ、それぞれの人生において楽しいことや苦しいこと、様々な感動を経験して人生を心豊かに過ごし、やがては仏さまの浄土に還っていく。

人生のさまざまな経験を通じて人間性を磨き、心(魂)の成長を遂げてあちら側の世界へと還っていく、というのが「善い人生」であると言えるでしょう。

「日日是好日」という言葉があります。「にちにちこれこうにち」と読んだり、「ひびこれこうじつ」と読むこともありますし、解釈にもいろいろな説があります。私は若い頃に先生から「毎日やるべきことを精一杯やって過ごせば、悪い日なんて一日もない、すべて好い日になるんだ」という言葉だと教わりました。とても良い言葉だと思います。また最近の私は「人生は、楽しいことも苦しいことも、善いことも悪いことも沢山あるけれど、全部まとめて好い日々なのだ」というふうに感じています。

禅の言葉ですから「これこそが正解!」というものではないと思いますので、それぞれの人生経験の中から深く味わっていただくのが良いのではないでしょうか。

50年後(気の長い話ですが)、100歳の私はどのように感じているのでしょう?

執筆者 千葉県南房総市
真言宗智山派 勝蔵寺住職 田口秀明

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