日本三不動の一 ロゴ 瀧谷不動尊

十月 心の中の仏さま

十月 心の中の仏さま

メジャーリーグで活躍中の大谷翔平選手が、高校時代に監督の指導のもと「目標達成シート」というものを使っていたことが話題となりました。開発者が曼荼羅(まんだら)にヒントを得て考案されたそうで「マンダラチャート(マンダラートとも)」と名付けられており、シートの構成も金剛界曼荼羅によく似ています。

メディアでも紹介されていましたが簡単に説明すると、まず正方形を縦横に三等分して9マスの枠を作ります。その中央に自分が実現したい目標を1つ書き込み、周囲の8マスには目標を達成するために必要な8つの項目を1つずつ記入します。更にその周囲には、8つの項目を中心とした9マスの枠を同じように作り、細分化した努力目標や行動計画、心がけなどを記入して81マスの目標達成シートができあがります。

目標と道すじが可視化され、目標達成の全体像と具体策が一目で分かるように整理されるというものです。試しに自分でも書いてみると、各目標を設定するだけでも大変な作業となりますが、スキルアップが必要な部分や優先的に取り組むべき事柄が洗い出されて効果的なワークシートになりました。大きな目標や夢をお持ちの方は、ワークシートを作ってみるだけでも何かヒントが得られるでしょうし、仕事や勉強、悩みごとの解決など、様々な場面で応用できそうです。

さて、曼荼羅の話に戻りますが、真言宗の寺院では堂内の西側(あるいは本尊に向かって左側)に金剛界曼荼羅、東側(右側)に胎蔵(たいぞう)曼荼羅をお祀りします。真言宗の二大経典である『金剛頂経(こんごうちょうぎょう)』と『大日経(だいにちきょう)』に説かれる「仏の世界」を図にあらわしたものです。大部の経典ですが、その中に「曼荼羅の描き方が書かれた部分がある」と教わったので、学生時代、習いたてのパソコンと参考資料を使って『大日経』の経文の通りに曼荼羅を再現してみました。すると胎蔵曼荼羅とは少し構図が違っていて、その原型といわれる曼荼羅やチベット密教の胎蔵曼荼羅と同じような形になることが分かったので、レポート提出した記憶があります。

『金剛頂経』に説かれる金剛界曼荼羅は「マンダラチャート」のように9分割されていて複雑なので、当時の私には描くことができませんでした。金剛界曼荼羅をよく見ていただくと、「チャクラ」という円(輪)がたくさん描かれています。この円(輪)は、以前にも法話の中でご説明した「月輪(がちりん)」です。金剛界曼荼羅の仏さまは月輪の中に座っておられるのです。

護摩などの修法をする際、導師は「心月輪(しんがちりん)」の中に様々な仏さまを観想しながら修法を進めていきます。皆さまも曼荼羅を拝する機会がありましたら、曼荼羅の仏さまを心の月輪の中に思い浮かべながら、親しみを込めて手を合わせてみてください。

執筆者 千葉県南房総市
真言宗智山派 勝蔵寺住職 田口秀明
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