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八月 閻魔詣でと地蔵参り

八月 閻魔詣でと地蔵参り

旧暦の一月十六日と七月十六日には「地獄の釜のふたも開く」といわれます。

この日は閻魔大王のご縁日にあたり、各地の「えんま堂(十王堂)」ではお祭りが行われている地域も多いことでしょう。特にお盆の十六日は送り火の日と重なりますので、月遅れの八月十六日に十王堂へ新盆の提灯を納めたり、お供え物を持参したりと、お盆の一連の行事として閻魔さまにお参りをした経験がある方もいらっしゃると思います。

全国各地に伝わる地獄絵図には、閻魔大王をはじめとする十人の冥府の王(死後の世界の裁判官)と、様々な地獄の様子が画かれています。三途の川や針の山、血の池、火の車、釜茹でなど、絵で見るだけでも思わず顔をしかめてしまうほど恐ろしい責め苦に、亡者たちが苦しめられています。この亡者の身体はすでにこの世のものとは違います。地獄の猛火で焼かれても、鬼の持つ刀で切り裂かれても、一陣の風が吹けば身体はすぐに元通り、同じ責め苦が何千年も続くというのですから、地獄には絶対に行きたくありませんね。

閻魔大王の裁きの場には浄玻璃(じょうはり)の鏡があります。生前に悪事をはたらいた者は、その姿が高性能な防犯カメラの映像のようにくっきりと映し出されるということです。更には心の中の悪い考えまで映し出されるそうですので大変です。

また、私たちの両肩には倶生神(くしょうじん)という男女の神様が乗っているのだそうです。「(とも)に生きる神」と書くように、生まれた日からずっと私たちを守護してくださる有り難い神様なのですが、実は少し厄介です。倶生神は私たちの善い行いと悪い行いのすべてを記録しており、その一生の行いを間違いなく閻魔様に報告してしまうというのです。

しかし本当に厄介なのは倶生神ではなく、私たちの「日ごろの行い」ということになります。余程の善人でなければ、閻魔さまから厳しくお叱りを受けることになるかもしれません。

そんな時に救いの手を差し伸べてくださるのがお地蔵さまです。お地蔵さまと閻魔様は表裏一体の存在ですから、いざというときには閻魔様にお取り成しをして助けてくださるでしょう。

とはいえ、やはり私たちの日々の心がけがとても重要になります。心がけが悪くてはお地蔵さまも助けてくれるはずがありません。有り難いことに、お地蔵さまはどこにでもおられますし、道ばたで私たちのことをいつも見守ってくれています。 八月二十四日は地蔵盆の行事が営まれます。日頃からお地蔵さまにご縁をいただいて、善い行いを心がけていれば、いつでもどこでも、お地蔵さまがやさしく寄り添ってくださることでしょう。

執筆者 千葉県南房総市  真言宗智山派 勝蔵寺住職  田口秀明

               

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