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七月 施餓鬼せがき供養くよう

七月 施餓鬼供養

七月から八月にかけて、お盆の時期には多くの寺院で施餓鬼の行事が営まれます。

瀧谷山においても「観世音夏まつり」の施餓鬼回向(えこう)法要が勤修されます。

施餓鬼回向法要は、飢えと渇きに苦しむ餓鬼たちに食べ物を施して飢渇(きかつ)の世界(餓鬼道)から救い、その功徳をご先祖さまに回し向けて、追善供養をする法要です。

昔、お釈迦さまの十大弟子の一人である阿難(あなん)尊者という方が、真夜中に瞑想修行をしていると、餓鬼が目の前に現れてこう言いました。「おまえは三日後に命が尽きて、餓鬼道に堕ちるであろう。」

阿難尊者は驚いて「どうすればそれを免れることができるのか?」と尋ねます。

すると餓鬼は「多くの餓鬼や、バラモンの仙人たちに沢山の食べ物を布施すれば免れることができるだろう。」と答えました。

しかし阿難尊者はそんなに多くの食べ物を持っていません。そこでお釈迦さまに助けを求めて相談すると、少しの食べ物でも無数の餓鬼やバラモンに施すことができる、という不思議な力を持つ陀羅尼(だらに)(呪文)と施食(せじき)の作法を授かりました。そうして多くの餓鬼を救うことができ、ご自身も餓鬼道に堕ちることなく命を長らえることができた、という故事が伝えられています。

「おまえは三日後に死ぬ」と言われたら、自分には何ができるだろうか?と考えさせられます。三日後では身辺の整理くらいしかできないかもしれませんが、三カ月後だったら…三年後ならば…三十年後ならば…と考えていくと、「必ずそのときが来るのだから、一日一日を大切に過ごさなければいけない」とつくづく思います。

強欲、貪り、嫉妬など、欲望のまま自分本位に生きた者が、死後に生まれ変わる世界が餓鬼道だとされています。いま生きている私たちのそういった心や行為がそのまま餓鬼道につながるともいえますので、気をつけなければいけませんね。

お盆や施餓鬼の行事の際には、「そんな世界があるのかもしれないな」と、阿難尊者のお話を思い出していただければ有り難いです。

「過ぎた時間は戻らない」と頭では理解していても、日々の生活の中で時間を無駄にせず過ごすということは本当に難しいです。ならば少しでも、強欲や貪りといった餓鬼の心を離れて、分かち合いや思いやりの心で過ごす時間を大切にしたいものです。

執筆者
千葉県南房総市
真言宗智山派
勝蔵寺住職 田口秀明

                  

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