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お大師さまの四月のおことば「うながす」

お大師さまの四月のおことば「うながす」

 私達はえてして理屈が先行し、それに行動がともなわない場合が多いのではないでしょうか。現代社会も、知識が肥大化し、知識偏重主義が横行しているということができます。例えば、原発問題がそのよい例でありましょう。便利さの追求が原子力というエネルギーを生み出しました。クリーンなエネルギー源であるとうたわれた原子力は、もはや社会の隅々にまで利用され、社会に抜き差しならない状況にたちいたっております。しかし、その廃棄物の処理には見通しがたっておりません。さらに、細胞や遺伝子などの極少なるものについての先鋭的な研究は、生命をあやつる事態にまでいたっております。

 これら知識偏重主義の産物は、いずれも心をないがしろにしているということを危惧するものであります。何よりも人間とは、身と心とによって成り立っているものです。

 毒箭を抜かずして空しく来処を問い、道を聞いて動かずんば、千里いずくんか見ん

(私達にはすでに毒矢がささっていて、やがて死がおとずれるのに、空しく矢の飛んできた先を知ろうとしてばかりいる。これが迷える人の実態ですが、すばらしい教を聞いても何んの行動もおこさなければ、どうして自分のものとすることができましょう)
(『十往心論』第十)

-当山御宝暦の法話から転載- 執筆者 福田 亮成 師

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