この世界を成り立たせている六つの要素「地(ち)」「水(すい)」「火(か)」「風(ふう)」「空(くう)」「識(しき)」を「六大」といいます。それは文字通り、大地と水と火と風と空間と、そしてそれらを認識する私たちの意識です。
お大師さまはこの六大を「六大は無碍(むげ)にして常に瑜伽(ゆが)なり」と説かれました。「六大はそれぞれがそれぞれとして存在しているのではなく、それぞれが互いに影響し合い、融合し合い存在している」という意味です。
現代は、水とは酸素と水素から成っている、と、分析することで理解しようとします。しかし、私たちにとって手にすくった水は透明で、さらさらと流れ、冷たさで喉の渇(かわ)きを癒(いや)してくれるものです。そのように、現象を要素に分解して理解するのではなく、六大無碍の姿で現れているものを、そのままに受け止めることが、知識を越えた仏さまの智慧なのです。
-当山御宝暦の法話から転載-
執筆者:東京都港区 真言宗智山派 宝生院住職 小山龍雅 師