周利槃特(しゅりはんどく)と言う方は、お釈迦様のお弟子さんで十六羅漢のお一人です。しかし、お釈迦様のお弟子さんになられた頃は、自分の名前さえしばしば忘れる程記憶力が悪かったので、背中に名札をはっておいたくらいでした。こんな調子ですから、お釈迦様の教えを覚える事など出来ません。ある時彼は、お釈迦様に「世尊よ私はどうしてこんなに愚かなのでしょうか。私はとても仏弟子たることはできません」するとお釈迦様は、優しく答えます。「お前は愚者ではない。自分が愚者である事を知らぬのが本当の愚者である。お前はおのれを知っている。だから真の愚者ではない」そして、一本の箒(ほうき)を与え「塵を払い、垢を除かん」と言う一句を教えました。その後彼は、多くのお坊さんの履物の塵を払い各所を掃除しつつこの句の意味を考え唱えやがて悟りを開き阿羅漢(聖者)となられたのです。成功を収める為には周利槃特(しゅりはんどく)の様に先ず、己を知り小さな事でも、徹底して精進して行く事が大事な事ではないでしょうか。
執筆者
埼玉県加須市不動岡
真言宗智山派
不動ヶ岡不動尊 總願寺住職 山口眞司師