弘法大師空海様のお誕生が六月十五日。そして、興教大師様のお誕生日が六月十七日です。興教大師様のことはあまり知られていませんが、平安時代の後期に高野山を復興し、その後、根来寺に居を移して真言教学を深めた方です。

　「妄（もう）去り真来たるは、豈（あ）に智用（ちよう）ならずや」。

　興教大師様が持仏堂の障子に書いた文の一節です。迷いが去り、心が澄み切って、真実が見えてくるというのは、ひとえに仏の知恵の力のおかげである、という意味です。

　仏の知恵は人間の理屈を超えています。二に二を足して四は人知。しかしそれが五にも十にでもなり、十から十を引いて、なお十にも二十にもなるというのが仏の知恵です。

　そして仏の智恵と慈悲が一体になると心眼が開かれます。それこそが、お不動様の持つお力なのです。

執筆者 寺田 信彦師
略歴：千葉県館山市沼
真言宗智山派 總持院住職
真言宗智山派 専修学院長