令和三年〔辛丑歳〕新しい年を迎え、当山においては開創一千二百年という記念の年となります。瀧谷不動尊の縁起によれば、弘仁十二(821)年に弘法大師さまが国家の安泰と人々の幸せを祈って、このお寺を開創されたと伝えられています。その「幸せの祈り」は当時の人たちだけでなく、1200年後の今を生きている私たちにも、時空を越えて届けられています。
お不動さまの威徳力と弘法大師さまの祈りの力が、地域やそこに暮らす人々の幸せを守り、また地域の人々の信仰の力によって、1200年もの長い間お寺が守られてきたということになりましょう。本当に有り難いことです。
長い長い歴史の中で、政治や権力によって信仰の場が奪われてしまったり、さまざまな要因で信仰が途絶えてしまったという例は少なくありませんが、河内国瀧谷の当地において代々受け継がれてきた信仰の力、多くの人々の信心のおかげで、今日の私たちも瀧谷のお不動さまやお大師さまに手を合わせることができます。
どれだけ多くの人々がお不動さまに手を合わせ、ご加護をいただいて幸せな日々を過ごされてきたことでしょうか。そのすべての人のお顔を、お不動さまは覚えておられるのだと思います。お不動さまの大慈悲の力は、いつも私たちに降り注がれています。お大師さまは今も私たちの幸せを祈り、見守ってくれています。私たちが堅固なる信心をもって手を合わせるとき、仏さまの力と私たちの祈りの功徳が一体となって、大きなご加護をいただくことができるのです。
1200年という時をこえて信仰の場を守り続けてくださった多くの先人たちに感謝し、「幸せの祈りの力」が久しく受け継がれていくことをご祈念いたします。
合掌
執筆者
千葉県南房総市
真言宗智山派
勝蔵寺住職 田口秀明