『華厳経入法界品』という経典の末尾に「普賢行願讃」と呼ばれる章句があります。これは普賢菩薩の行願(誓い)を十に要約したもので、「諸仏を礼敬し、如来を称讃し、広く供養を修し、業障を懺悔し、功徳を随喜し、転法輪を請い、仏の住世を請い、常に仏に随い学び、恒に衆生に順い、普く皆な回向すること」と説かれています。
これは大乗の菩薩が理想として掲げている仏の大慈大悲の実現を具体的に示したものと考えることができるでしょう。その基本となるものは何かと言えば、同じ「十地品」に説かれる十大願の最初「自分の信心を浄めながら、未来永劫にわたるまで一切の諸仏を供養恭敬し礼拝してゆく」という決意に他なりません。
これこそが菩薩の限りなく大いなる決心であり、限りなく大いなる行と言えるでしょう。願と行とが表裏一体となって、現実の生活の中で活動している様を見る思いがします。
「願」とは、実にこのような菩薩の行動を伴ってこそ活性化してくるものであり、それがまた如来の本願力として、仏の威神力として現前し、菩薩のすぐれた智力として働いていると説かれています。
「行」の裏付けのない「願」は、その生命を失ったも同然であると言えるでしょう。
執筆者 高麗行真
略歴:東京都西東京市泉町
真言宗智山派 如意輪寺住職
真言宗智山派 教学部長