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10月 苦しみを乗り越える方法

10月 苦しみを乗り越える方法

「人生に無駄なことは一つもない。全てに意味がある。」と言われます。

しかし「今が苦しみの真っただ中」という人にとっては、「こんな苦しい経験などしたくはない。いったい何の意味があるというのか?」と、とても受け入れがたい言葉でありましょう。

「人生に無駄はない」という言葉は、豊富な人生経験の中でいくつもの苦難を乗りこえ、「楽しいことだけでなく、苦悩もまた人生を豊かにする良い経験であり、いつかきっとその経験が役に立つ時がくる。」と知っているからこそ言える言葉です。

仏教では、私たちが生きているこの世界のことを「娑婆(しゃば)世界」と呼びます。「堪え忍ばなければならない世界」という意味です。何を堪え忍ぶのかというと、人生における諸々の苦悩・苦難です。辛いこと、苦しいこと、自分の希望通りにいかないことなど、人生に苦悩はつきものです。

この「苦」を乗りこえる方法として、お釈迦さまは「八正道(はっしょうどう)」の教えをお説きになりました。八つの正しい道とは、正見(しょうけん)(正しい見方)・正思惟(しょうしゆい)(正しい思考)・正語(しょうご)(正しい言葉)・正業(しょうごう)(正しい行為)・正命(しょうみょう)(正しい生活)・正精進(しょうしょうじん)(正しい努力)・正念(しょうねん)(正しい思念)・正定(しょうじょう)(正しい精神統一)です。

もしもいま「苦の真っただ中」にあるという方には、是非この中の一つでも実践していただきたいのです。苦悩の多い娑婆世界であっても、「諸行無常(すべてのものは移り変わる)」なのですから「苦」も少しずつ変わっていきます。

八正道の「正語」と「正業」を実践して、毎日正しいことばを使い、正しいおこないを心がけていれば、苦しい状況も必ず好転していくはずです。

人生には良いときもあれば、悪いときもある。どんなに幸せそうに見える人にも苦悩はあります。その苦悩を無駄なこととせず、意味のあるものにするためには正しい努力も必要です。

また、「祈る」という行為は「正念」や「正定」につながるでしょう。神仏を敬い、自分の心を見つめなおし、素直な心で手を合わせる。そのように「祈る」ことができれば、おのずと道は開けるのではないでしょうか。

お不動さまの慈悲の力は、いつでも、どこでも、だれにでも、平等に降り注がれています。お不動さまの利剣(りけん)は魔を祓い、背中の火焔(かえん)は災いを焼き尽くして私たちを守って下さいます。それでもまだ苦悩が残っているのであれば、それは私たちが成長するために必要な試練ということなのでしょう。

きっとお不動さまが導いて下さいますから、覚悟を決めて乗りこえていきましょう。

執筆者 千葉県南房総市
真言宗智山派 勝蔵寺住職 田口秀明

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