日本三不動の一 ロゴ 瀧谷不動尊

2月 福徳をさずかる

2月 福徳をさずかる

「いまはむかし…」という言葉でお馴染みの『今昔物語集』は、平安時代の後期に成立したとされる説話集です。題名のみが残るお話や欠本などもありますが、第1巻から第31巻まで1000話以上の物語が収められています。

日本の昔話ばかりかと思いきや、第1巻から第5巻までは天竺(インド)の物語です。第1巻はお釈迦さまのご生誕のお話からはじまり、第5巻までのほとんどがお釈迦さまや仏教に関する物語です。第6巻から第10巻まで中国の説話が並び、第11巻から第31巻が日本の昔話となっています。

「今は昔…」といえば、「竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむいひける。」と、授業で暗唱された方も多いのではないでしょうか?『竹取物語』は年配の方から幼児まで、最も馴染み深い昔話の一つでありましょう。(諸本あり、『今昔物語集』所収の話とは文言が異なっています)

この物語の中で、かぐや姫は求婚する5人の男性に対して、「仏さまの鉢」や「火鼠の皮衣」、「龍の首にある珠」などを要求します。この「龍の首の珠」は如意宝珠であるとされています。彫刻などの龍は、宝珠を手に持った姿であらわされることが多いですが、本来は首の部分に隠されているそうです。龍の首だけにあるのではなく、仏教ではお地蔵さまや千手観音、如意輪観音、虚空蔵菩薩、吉祥天、びんずる尊者など、多くの菩薩や護法神が如意宝珠を手に持っておられます。

如意宝珠は思いのままに福徳財宝をもたらす宝の珠のことで、瀧谷不動尊にも寺宝として大切にお祀りされています。節分会の当日のみ、ご参拝の皆さま方にお授けがおこなわれますので、是非そのご功徳をいただかれますようお勧めいたします。

真言宗においてはこれを仏舎利(お釈迦さまのご遺骨)と同一視し、最極の秘物とされています。私は朝勤行(ごんぎょう)の際に毎月数回『舎利和讃(しゃりわさん)』をお唱えしていますが、その一節に「見仏(けんぶつ)聞法(もんぽう)有りがたし このたび舎利に()(ぐう)せり 知るべき契りのいますなり」という句があります。「知るべき契り」とはこの世に生まれる前から定められた宿縁のことで、「このたび仏舎利に出会うことができたのは、今生においてきっとお釈迦さまの舎利や如意宝珠にご縁をいただけますように、という願いを込めて生まれてきたからである」という意味になります。『舎利和讃』を唱えるたびに、このご縁に恵まれたことに感謝して日々手を合わせています。

多くの皆さまが如意宝珠とのご縁を結ばれ、以後いよいよ信心を深くして、大きな福徳を得られますようお祈り申し上げます。

執筆者 千葉県南房総市
真言宗智山派 勝蔵寺住職 田口秀明

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