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十一月 輪廻りんね往生おうじょう

十一月 輪廻と往生

誰しも子供の頃に「生まれ変わったら何になりたい?」と話した経験があると思います。また、架空のこととしてですが「生まれ変われるなら、どのような身分や職業に就きたいか?」などと話す機会は大人になってもあります。

現実的には「自分が死んだ後、四十九日の間に輪廻転生(りんねてんしょう)する」と本気で考える方は少ないと思いますが、親族のどなたかが亡くなられて四十九日忌の法要の時などには、「どこかに生まれ変わっていくのでしょうか?」と聞かれることもあります。

仏教には古くから六道(ろくどう)輪廻(りんね)という思想があることをご存じの方は多いと思います。六道は、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天界の六つの世界のことで、生前の行いに応じてこれらの世界を次々と生まれ変わる、という考え方です。

三帰礼文(さんきらいもん)」や「三帰依文(さんきえもん)」という経文の一節に「人身(じんしん)()(がた)(いま)(すで)()く、仏法聞き難し今既に聞く」という言葉があります。六道のうち、上から二番目である「人間」としてこの世に生まれる確率は、六分の一ではありません。氷山の一角のように、限られたごく一部の存在が「人間」と「天」ということになります。ですから「人として生を()けることはとても難しいが、私は今すでに人として生まれることができた」という意味の経文になっています。本当に「有り難い」ことなのですね。

私が小学生だった頃はちょうど1970~80年代で、オカルト映画や心霊現象、前世占いなどのテレビ番組が流行ったこともあり、小学生でも「この世に人間として生まれてきたのは、前世でとても善い行いをしたからなんだって!」という話をしていました。また近頃はパワースポットに行かれたり、神社やお寺に参拝して御朱印をいただいたり、若者にも参拝マナーの良い方が増えました。神仏にご縁をいただいて善い行いを心がけていれば、後生得楽(ごしょうとくらく)の良いお導きとなることでしょう。

六道輪廻の思想に対して、現代の日本の仏教各宗派では、故人はお葬式の際に引導を授けられる(浄土真宗では阿弥陀仏に全てをおまかせする)ことによってご本尊に導いていただき、更には残された親族のご供養を受けて、四十九日までの間に浄土へ往生する(輪廻の世界から離れて成仏する)ということになるのだと思います。

何年も前の話ですが、近所のお寺のご住職を車でお迎えに行き走っていた時のこと、「あの人はきっと良いところへ行くなぁ。」と話しかけられたので、「あの人?…どこへ行くのだろうか?」と見てみると、道端で一人のご老人がせっせとゴミを掃除しています。「なるほど!」と思いました。「良いところへ行く」というのは、「亡くなられた後にきっとお浄土へ往かれるだろう。」という意味なのでした。

そのような感覚で物事を見る目を持つことと、正しく丁寧に生きることの大切さを学ばせていただきました。

執筆者 千葉県南房総市
真言宗智山派 勝蔵寺住職 田口秀明

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